子育て支援も就農支援も充実した理想の環境でミカン農家を目指す
落合 司さん(32歳) 雅子さん(31歳) 奏介くん(3歳)
“30歳になれば農家になる”という人生設計
「ほら!今度はこっち、こっちだよ!」
港に近い公園で元気に飛び回る男の子と、追いかけるパパとママ。
八幡浜では珍しくはない光景だが、落合司さんは八幡浜に来るまでこんなに子どもと関わることはできなかったという。
埼玉県に住んでいた落合一家。司さんは朝早くに出勤し、帰宅は深夜となる毎日で「起きている子どもに会えない日もありました。」
そんなある日、雅子さんに「そろそろ30歳になるよ」と声をかけられた。
父方も母方も実家は農家という司さんは、農業を身近に感じていた。“30歳までに仕事をやめて農家になりたい”という夫の夢を知っていた雅子さんは、「今の状況はかわいそう、好きにさせてあげよう」と声をかけたのだ。
家族全員でみかんの産地に足を運ぶ日々
妻に背中を押された司さんは、埼玉近郊の農家で農業体験を始めた。あるとき、果樹農家を紹介され「妻が妊娠中にみかんをよく食べていたこと、果物アレルギーがある僕でも柑橘類は食べられること」から、みかん農家を目指すことを決心。
夫妻は東京のふるさと回帰支援センターに相談したり、全国の農業団体が出展する「新・農業人フェア」に参加。情報を集め休日を利用し、広島、静岡などみかんの産地を見て回った。
「農業といっても、奥多摩のような東京近郊の自然豊かな場所を想像していました」と苦笑いの雅子さん。「私も東京で仕事をしていたので、関東圏なら続けられるかなと。でも声をかけた手前、覚悟を決めて一緒に足を運びました。納得がいくまで見て回りましたよ。あとで『あっちの方が良かったかも』と思いたくありませんから」
夫婦で何度も話し合い、共に納得したのが八幡浜だった。
夫婦が八幡浜に決めた理由
八幡浜を選んだ理由に「海の景色の素晴らしさ」をあげた司さん。2018年1月、初めて八幡浜を訪れたとき「港町の雰囲気が、父方の出身地である北海道の余市に似ている感じがして気に入った」という。
次に就農へのフォローが良いこと。他の自治体の中には、移住者に資金だけを渡し、自分で就農して、という所もあるが、八幡浜ではJA・市・県・農家と連携した西宇和みかん支援隊で、研修から就農まできめ細やかにフォロー。「農家になって農業で生計をたて、そのまちで生活するという目標が、八幡浜でなら達成できると思いました」
各機関が連携していることで助かったことも多い。「農業のこと、生活のことなど、それぞれに相談窓口を探して回るのはとてもストレス。でも八幡浜はどこで相談してもたらい回しにせず、専門の窓口に連絡をとってくれた」と雅子さん。何度も愛媛に足を運べるわけではない。短い滞在中に、JAの方が児童センターまで車を走らせ、見学させてくれたこともあったとか。
「その年の4月に園地で作業体験をしました。農業体験で利用できる、宿泊・合宿施設マンダリンに滞在し、妻が子守の日は僕が園地に行き、妻が園地に行く日は僕が子守と交替で」このとき奏介くんはまだ1歳3カ月。小さな子どもと移り住んだらどういう生活なのかを確認し、ここでなら安心して生活できると、2018年9月に落合家は八幡浜へ移り住んだ。
穏やかに暮らしながら、夢の農家まであと少し
現在、司さんは農業研修生。研修生用の園地があり、他の研修生らと一緒に研修に励む。
園地までは車で約30分、景色のよい海岸線のドライブを楽しんでいるという。
雅子さんは自宅から車で5分の会社に仕事を見つけ、パートで働いている。八幡浜の待機児童は0。ただし、年度初めには保育所ごとの受け入れ可能人数が決まっている。9月に移住した奏介くんは、特定の保育所を希望していたため、翌年から保育所に通うことになった。
移住して変わったことは「車の渋滞はないし、目的地で行列を作ることもないので、家族全員出かけたがるようになりました」と司さん。以前は「電車の中で子どもが泣いたらどうしよう、おむつ替えはどこでできる?」といつも緊張していた雅子さんも、「八幡浜の人は子どもにやさしく話しかけてくれます。子どもが騒いでも温かい目で見てくれて、ああここではビクビク子育てしなくていいんだと思えました」と穏やかに話す。住居は不動産屋で探したアパートで、以前の暮らしぶりと大差はないが、「移住して、近所の方から野菜などをいただくという話をよく聞きますが、本当なんです。お向かいのおばあちゃんがよくケーキを焼いてくれるんですよ」とうれしそうだ。
司さんは、農家として独立できたら「僕の両親をみかんアルバイターとしてスカウトするつもり」だそう。雅子さんの両親は移住に賛成で、既に八幡浜にも来たことがあるそうだが、司さんの両親は“嫁をもらった息子の親”として責任を感じ、案じているという。「アルバイト料は払います。息子が家族を養っているのが分かれば、安心してくれると思います」
自分を応援してくれる人々に感謝し、熱心に研修に励む日々。司さんの農業に取り組む真面目な姿勢を見て、園地を任せようという農家も現れ始めた。夢の実現まで、もう少しのところまで来ている。
気になる移住のホンネ教えて
Q1 お気に入りの場所はどこですか?
(雅子さん)以前、司書をしていたこともあり図書館がお気に入りです。市内に2館もあり、ベストセラー本が順番まちなしで、すぐ読めるのがうれしい。
(司さん)海が見えるみかん畑。夕日の海もいいですが、夏の昼間、12時頃のキラキラ光る透明な海もなんとも言えず美しい。
Q2 移住して良かったこと、困ったことは?
(司さん)家族でいる時間が増え、子どもの顔が毎日見られること。困ったことは特になし。
(雅子さん)夫が楽しそうに働いていること。帰りが早く、夫婦で一緒に子育てできること。
困ったことは、実家が遠くなったこと。それから、病院の選択肢が少ないこと。子どもは、病院に合う合わないがあるので。
Q3 念願の農業に携わった感想は?
みかんは、手をかければかけるほど、良いものができるのがおもしろい。初めて収穫したときは文字通り“実になったな”と感じました。また、“農家は休みなし”というイメージがあると思いますが、みかんは期間中にやるべき作業が決まっているので、計画を立てて作業すれば、休みは作れます。もちろん雨の日は休みです。
Q4 移住を考えている人にアドバイスを
まず、現地に行って自分の目で確かめることです。それに、住むところだけでなく、子どもを遊びに連れていける場所や、買い物スポットなどがどこにあるかは、周辺の市町など広範囲で見るといいですよ。
また自分が目指す生活をしている移住者に会って、ナマの声を聞くと良いと思います。私たちはこのポータルサイトに紹介されている兒嶋さんにお会いして話を聞き、とても参考になりました。
落合 司さん(32歳) 雅子さん(31歳) 奏介くん(3歳)
移住スタイル | Iターン |
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移住時の年齢 | 30代 |
家族構成 | 夫婦と子ども |
八幡浜市移住担当者からひと言
西宇和みかん支援隊では、農業経営を始めるための総合的支援を実施しているので、確実にステップを踏みながら新規就農を目指せます。まずは、市の移住相談窓口にお問い合わせください。また、小さなお子様を連れての移住は、心配も多いもの。どこに行ったらママ友が作れるの?子育ての悩みはどこに相談できる?などのご質問も、お気軽にどうぞ。