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“2人でいる時間を大切にしたい”望みを叶えるため新天地でみかん農家へ

兒嶋 隆文さん(36歳)梓さん(36歳)

みかん狩り経験ゼロ!からのみかん農家へ

10月は極早生みかんの最盛期。就農して半年あまりという兒嶋さんの畑でも、朝早くから小さなかわいいみかんを摘み取っていた。

「当たり前のことなんですが、こうやって1個1個、だれかの手で摘み取られたみかんを食べていたんだなって」と感慨深げに話す隆文さん。群馬県出身の2人は、八幡浜に来るまでみかん狩りさえしたことがなかったという。そしてわずか2年ほど前までは、みかん農家の“み”の字さえ頭になかったのだ。

オレンジ色の旗を追って八幡浜へ

小学校の同級生だという2人が結婚したのは、2012年のこと。ところが夜勤の多い隆文さんは、日勤の梓さんとの生活リズムが合わず、すれ違いの毎日だった。

意を決して隆文さんは転職。そこは農業資材を扱う会社だった。多くの農家や農業移住者たちとふれあううち、ふと「農業はどうだろう?」という考えが頭をよぎった。

2015年7 月、軽い気持ちで東京で開催された農業移住者募集フェアに出かけた2人。群馬の近県を覗いていたが「オレンジの旗がたつブースが盛況で。満席だったのですが、たまたま席が空いたので座ったんです。」

それが、※1西宇和みかん支援隊のブースだった。

西宇和は八幡浜市、西予市三瓶町、西宇和郡伊方町の三市町を指す。山が海に迫る平地の少ない地域で、温州みかんを中心とするかんきつ類の一大産地。知名度の高いみかん産地なのに、移住を募るほど人口が減ってることが兒嶋さんには不思議に思えた。「果物栽培もいいな」という漠然とした考えと、海のある県への憧れから、自然と愛媛県に興味を抱くようになった。

素早い判断でチャンスを逃さない

ここから兒嶋夫妻の移住・みかん農家への道は、まるで高速道路のようなスピーディーな展開だった。

まずフェアの翌週、1泊2日の旅行がてら愛媛県へ。天気もよく、海沿いを走った時は「テンションがあがりました。いいところだな~と。」

2度目の訪問はシルバーウィークを利用し、みかん支援隊の援助で、ホームステイとみかん栽培体験をする。

八幡浜市の真穴(まあな)地区に住む移住者の先輩も、仲間の移住者たちを集めてくれていろいろな話が聞けたという。

翌年1月、勤務先にも事情を話し10日間の日程で愛媛入り。この時は移住の気持ちが固まっていたので、作業体験に加え家探しも目的だった。ちょうどオープンしたばかりの※2みかんの里宿泊・合宿施設「マンダリン」を紹介され、ここを一時の仮住まいとした。

2016年春いよいよ八幡浜へ移住。4地区をまわって体験実習を積み、自分たちにあった土地を探した。希望は家族経営できること。条件に合いそうな双岩(ふたいわ)地区にしぼり、隆文さんは研修を続け、梓さんは農協のパートに就いた。

11月、近所の人から「農地付の空き家を買わないか」という話が舞い込んできた。家を購入する予定はなかったが、敷地内に2階建て倉庫もある格安物件だ。憧れの海からは遠いが、近くを県道が通っているので交通の便が良い。子どものことや老後を考えると安心だ。何より、農業指導を仰ぐ師匠宅にも近い。

問題は、就農家でないと農地付の家が買えないという規約だった。研修を始めて1年もたっていないが、ツテもない中、農地を手に入れるチャンスは滅多にない。タイミングを逃すまいと、隆文さんは予定より早く研修を切り上げ、2017年4月から新規認定就農家としての新たな生活をスタートした。

農業は修業中、住まいも現在進行中

購入した家は傷みが激しく、そのままでは住める状態でなかった。そこで県や市からの補助金と自分たちの蓄えから予算を組み、水回りを中心に住宅施工業者に家の補修を「予算内で収まる部分まで」依頼した。「フローリングはリビングまではプロに任せ、それ以外は自分たちで貼りました。」農作業の合間に、自分たちで壁に漆喰を塗ったり、棚をつけたりと、夫婦でのリフォームを楽しんでいる。

家の前に流れる小川はホタルが舞う清流で、隣りの畑には野菜がたわわに実っている。畑の持ち主は「自由に採っていいよ」といってくれるそうだ。

家と会社の往復だった群馬時代より、ここの知り合いの方が多くなったという隆文さん。パートで働いていた梓さんもしかり。現在、梓さんはパートを辞め、一緒にみかん作業で汗を流す。

相手を思いやる気持ちと熟練農家への感謝の気持ち

思わぬ発見もあった。話す時間が増えることで、いまだにお互いの知らない面がでてくるのだ。そして、相手のことを思いやる気持ちが一層深まったという。

収穫中の極早生みかんは酸味の利いたさわやかで若い味。新たな道を歩む2人のようだが、故郷の友人たちに贈るなら、もう少しあとに収穫する甘いみかんにしたいそうだ。

みかん栽培が軌道にのったら、友人たちを自宅に招きたいとも考えている。

「倉庫の2階に寝泊まりできる部屋があるんです。友人たちにみかんアルバイターでもしてもらいましょうか?」隆文さんが冗談を飛ばすと、かたわらで梓さんがコロコロ笑う。

まだまだ修業中でわからないことも多いという二人だが、熟練農家の方々は、忙しい中でも若い二人に手間を厭わず教えてくれ、感謝の念が尽きない日々を過ごしている。

(脚注)

※1 かんきつ農家志望者やかんきつ農家のアルバイト(援農)希望者などに情報提供と就農・援農までの総合的なサポートを行う。JAにしうわに事務局を置く。

※2 みかんの里宿泊・合宿施設「マンダリン」。廃校となった小学校の校舎を転用し、みかん収穫期のアルバイターや農業研修者の宿泊施設として整備したもの。

気になる移住のホンネ教えて

Q1 移住を考えるにあたって大切にしていたことはなんですか?

最初から2人で相談しながらすすめることです。いっしょにできる仕事がしたかったので、カフェや雑貨屋さんをやるのもいいなと思っていました。また旅行が好きでいろんな所を見てきたので、いいところに住みたいなとも。

Q2 困ったこと、不安なことはありますか?

新規就農者への補助金(5年給付)が打ち切られた時に、自営だけでやっていけているか?ということです。
逆にそれを目標に、努力していきたいと思っています。

Q3 移住を考えている人にアドバイスするとしたら?

つらい事、くじけそうになったときは、初心を思い出してください。何を一番大切にしたいのかを考えれば、おのずと道は定まります。真穴地区の海に心ひかれた移住者は、海を一番に考えます。私たちは2人でいることが一番なので、そのためなら頑張れました。

兒嶋 隆文さん(36歳)梓さん(36歳)

兒嶋 隆文さん(36歳)梓さん(36歳)

移住スタイル Iターン
移住時の年齢 30代
家族構成 夫婦

八幡浜市移住担当者からひと言

兒嶋さん夫妻のように、全く知らない土地への I ターンは、仕事や生活全てにおいて不安なことも多いと思います。八幡浜市には、“地域おこし協力隊”という「移住・定住の促進に係る支援活動」を業務とするメンバーがいます。東京都からの転入者で、ソトモノ目線で八幡浜市へ移住を呼び込み活動や魅力のPRをしています。
地元の人には当然すぎて気づきにくい移住者の戸惑いや困りごとにもアドバイスができるので、気軽に相談してください。