山暮らし、諦めました。~移住して見えた田舎暮らしの現実~
移住前、私たちは
「山に囲まれた自然の中で暮らす生活」に、憧れを抱いていました。
朝は鳥の声で目覚め、昼は畑仕事、夜は静かな時間を過ごす。
そんな暮らしに、どこか理想を重ねていたのだと思います。
実際に山の中で暮らし始めてみて、
自然の豊かさや空気のきれいさを感じる一方で、
「これは、私たちには合わないかもしれない」
そう思う場面も、少しずつ増えていきました。
今回は、
私たちが「山暮らしを諦める」という選択をした理由を、正直に綴ってみたいと思います。
① 夜はとにかく真っ暗。想像以上の暗さ
移住した当初から、
私たち夫婦は市内中心部に住み、仕事場だけが山という生活をしてきました。
主人の祖父母が山に住んでおり、みかん畑もその周辺にあるため、
日中は山へ通い、夜には市内に戻る、という暮らしです。
そのため、
市内中心部と山の暮らしを、日常的に行き来しながら比べる
そんな生活を送ってきました。
そんな中で、強く感じたのが、山の夜の暗さ。
日が落ちると、本当に驚くほど真っ暗になります。
街灯はほとんどなく、外に出るには懐中電灯が必須。
市内の明るさに慣れている分、その暗さが、より一層際立って感じられました。
さらに、
山間部に住んでいる先輩移住者さんとお話していたとき、
「夏場はムカデがしょっちゅう出るよ」
「ムカデに刺されたこともあるから気を付けて」
そんな話を聞いて、正直、かなりドキッとしました。
そして実際に、ある夏の日。
主人が祖父母の家で昼寝をしていたところ、
家の中に入り込んでいたムカデに、
知らない間に足を噛まれていたことがありました。
幸い大事には至りませんでしたが、
「家の中にいても、安心できない」
そんな感覚に、ゾッとしたのを覚えています。
② 狭い道&運転ヒヤヒヤ…
山の仕事場へ向かう道は、車1台がギリギリ通れる幅で、すれ違いはほぼ不可能。
対向車が来たら、どちらかがすれ違える所まで戻る、
そんな場面が日常でした。
運転が得意ではない私にとって、この道は毎回ヒヤヒヤの連続。
祖父母の家に遊びに行くだけなのに、それが小さな“緊張イベント”になっていました。
特に大変だったのが、霧が出る日。
山は霧が出やすく、
ひどいときは数メートル先が見えないほどになることも。
前が見えにくい中、カーブだらけの細い道を進むのは、正直、かなりのストレスでした。
「暮らす」という視点で考えると、この“毎日の運転の負担”は、想像以上に大きかったです。
③ 夫が休めない…家にいても仕事モード
現在、家に帰ると、自然と気持ちの切り替えができ、
夫も「仕事モード」から「オフ」へと戻れる時間がつくれています。
でも、もし山に住んでいたらどうだっただろう…と、考えることがあります。
仕事場と家が同じ場所にあると、どうしても
「今からちょっと見に行こうかな」
「気になるから確認してこよう」
となりがち。
実際に、先輩移住者さんで農家さんの中には
朝から晩まで、ずっと仕事のことが頭から離れない
という方も少なくありません。
山に住んでいたら、
家にいても常に仕事が目に入り、
気持ちの切り替えが難しくなっていたと思います。
今のように、
「家に帰れば、ちゃんと休める」
この環境は、夫にとっても、
そして私たち夫婦にとっても、
とても大切なものだと感じています。
④ 妊娠・これからの子育てを考えて
妊娠をきっかけに、
これからの暮らしや子育てについて、より現実的に考えるようになりました。
現在は、市内中心部に住んでいるので、
体調が急に悪くなったときや、夜間の受診が必要なときも、
一次救急の夜間診療所へ比較的スムーズに行くことができます。
八幡浜市では、
発熱や軽いケガなど、比較的症状が軽い場合に対応する「一次救急」、
入院や専門的な治療が必要な場合には、「二次救急」として、地域の病院が輪番制で対応しています。
※輪番制とは、地域内の複数の病院が当番制で交代しながら、休日や夜間の救急診療を担う仕組みのこと。
その日の当番医は、市の広報やホームページで確認できるので、
「いざ」というときに、どこへ行けばいいのか迷わずに済むのも、とても心強いポイントです。
でも、もし山に住んでいたら――。
「急に体調が悪くなったら?」
「夜中に陣痛が来たら?」
「子どもが高熱を出したら?」
そんな“もしも”を考えたとき、
真っ暗な山道を、慌てた状態で運転して走れるだろうか…
と、不安を感じるようになりました。
さらに、将来の子育てを思い描いたときに、
もうひとつ気になったのが、通学や日常の移動です。
私の主人が働いている地域の山には、学校がありません。
通学については、送迎があるため、大きな問題があるわけではありません。
それでも、
習い事や放課後の活動、友達との行き来などを考えると、
どうしても保護者の「送迎」が必要になる場面が増えてきます。
子どもが成長するにつれて、
毎日の生活リズムや、家族の時間の使い方にも、
少しずつ影響してくるのではないか。
そんなことも、
現実的な視点として考えるようになりました。
「自然の中で子育てしたい」
という理想と同時に、
「無理なく、安心して暮らしたい」という気持ち。
その両方を天秤にかけたとき、私たちは、今の暮らしを選びました。
⑤ 山暮らしを諦めた=田舎暮らしを辞めた、ではない
山暮らしを諦めたからといって、
田舎暮らしそのものが嫌になったわけではありません。
自然の近さ、
人のあたたかさ、
ゆったりした時間。
こうした魅力は、今も変わらず感じています。
ただ、
**「私たちにとって無理のない距離感の暮らし」**を考えたとき、
山の中ではなく、
もう少し生活しやすい場所を選ぼう。
そう結論づけました。
現在~これからの暮らし
現在、そしてこれからも、
私たちは市内中心部で暮らしていこうと考えています。
山での暮らしと比べると、
・夜も明るい
・道が広い
・コンビニ、スーパー、病院が近くにある
・夫も、しっかり休める環境
・ほどよい距離感の人間関係
どれも、特別なことではないかもしれません。
でも、この「当たり前」が、私たちにとってはとても大きくて。
すべてが**“ちょうどよく”**、今の暮らしは、とても快適です。
まとめ:自分たちに合った暮らしを選ぶ
山での暮らしが合う人も、もちろんいます。
自然に囲まれた生活に、魅力を感じる方もたくさんいると思います。
ただ、私たち夫婦にとっては、
今の暮らし方が、無理なく、長く続けていける形でした。
移住には、正解も不正解もありません。
「どこに住むか」よりも、
「自分たちらしく暮らせるか」。
これから移住を考える方にとって、
私たちの経験が、ひとつの参考になれば嬉しいです。
次回
次回は、夫のみかん農家として生きるという選択について書こうと思います。
正解かどうかは、今でもわからない。
それでも続けてきた理由や、
「農業には夢がある」と夫が言うようになった背景を、正直に綴ります。
❁八幡浜市地域おこし協力隊 移住支援員❁
2023年4月に着任。結婚を機に八幡浜に移住してきました。
人の温かさに触れながら、スローライフを送っています。
新鮮な魚とおいしいみかんが食べれる町。それが八幡浜。来て見て食べてみてください。
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