「自然に囲まれた暮らしができれば、子育ても人生もうまくいく」
そんな思いから、地方移住を考えはじめる人は少なくありません。
私自身もその一人でした。
でも、実際に移住してみて、移住支援員としてたくさんの相談を受けてきて思うのは――
「地方移住=すべてがうまくいく」わけじゃない、ということ。
そんな「移住の現実」について、正直に書いてみたいと思います。
◎ 地方移住は、人生のリセットボタンじゃない
移住すると、環境はがらりと変わります。
通勤電車はなくなり、
近所の人が声をかけてくれる日常。
新鮮な野菜や魚、きれいな空気、広い空。
たしかに、心地よい変化はたくさんあります。
でも、それですべての悩みが消えるわけではありません。
新しい土地での人間関係、
仕事や収入のこと、
家族の生活スタイルの変化。
都会にいたときとは違う「新しい悩み」が出てくるのが現実です。
私自身も、移住当初は友達がいなくて孤独を感じたり、土地の慣習に戸惑ったりしました。
◎ 仕事の選択肢は、思った以上に限られる
移住相談で、もっとも多い悩みのひとつが「仕事」です。
田舎では、都会に比べて求人の数が少なく、職種も限られています。
「やりたい仕事」よりも「今ある仕事」から選ぶことが多くなります。
また、収入が下がるケースも少なくありません。
一方で、田舎では車がほぼ必須。
通勤、買い物、病院、子どもの送迎――
生活のあらゆる場面で車が必要になります。
車の購入費や維持費、ガソリン代を考えると、
「収入は減ったけど、生活費はあまり変わらない」
という声も、実際によく聞きます。
◎ 病院・買い物・教育環境は「近くにある」が当たり前ではない
田舎では、
・病院
・スーパー
・学校
すべてが「車で30分」が普通、ということも珍しくありません。
特に、妊娠・出産・子育てのタイミングで
この不便さを強く実感する方は多いですが、
それだけではありません。
自分や家族が体調を崩したとき、
急な通院が必要になったとき、
高齢の家族の介護が必要になったとき――
暮らしのさまざまな場面で、「距離」の壁を感じます。
◎ 孤独を感じる瞬間がある~先輩移住者さんからの声~
自然に囲まれた暮らしは、心を癒してくれる一方で、孤独を感じやすい環境でもあります。
実際に、先輩移住者さんから、こんな話を聞いたことがあります。
都会にいたころは、
幼なじみや、小・中・高の気心の知れた友達に囲まれていた。
それが移住してからは、周りにいるのは「知り合い」ばかり。
ある日、山でひとり作業をしていたとき、突然、涙があふれてきたそうです。
「なんで泣いてるんやろう、って自分でも分からんかった」
そう話してくれました。
その後、用事があって都会に行くことがあり、懐かしい友人たちと会って、
また戻ってきたとき。
不思議と、気持ちはいつも通りに戻っていたそうです。
「たぶん、どっちが良い悪いじゃなくて、
環境の変化に、心が追いついてなかっただけなんやと思う」
その言葉が、今でも印象に残っています。
また、別の移住者さんは、こんなことも話してくれました。
「都会には、きらびやかなものがたくさんある。
田舎には、正直そういうものはない。
そのきらびやかさが、恋しくなるときもあるんだよね~」
だからこそ、たまに都会へ行くと、
その刺激がとても新鮮で、
ついつい買い物をしすぎてしまうのだそうです。
移住すると、
自然や人のあたたかさに癒される一方で、
都会で当たり前だった刺激や、気心知れた人間関係を、ふと恋しくなる瞬間があります。
◎ 移住して感じた「想像と違ったこと」
移住してみて感じたのは、良いことばかりではなく、
「思っていたのと少し違った」と感じることもあるということです。
たとえば、暮らしの環境。
松山に住んでいたころは、自然を求めて郊外に出かけることもありました。
でも八幡浜では、周りに自然があるのが当たり前。
その分、逆に都会の雰囲気を求めて、市外へ遊びに出かけることが増えました。
また、地域によっては人との距離が近いと感じることもあります。
特に山間部の地域では、昔からのつながりが強いコミュニティが残っているところもあります。
市内中心部ではそこまで濃い付き合いはありませんが、
移住したばかりの頃は、孤独を感じることもあるかもしれません。
ほかにも、意外と戸惑ったのが「道の狭さ」。
移住前は2車線の広い道路を走ることが多かったのですが、
こちらでは車がすれ違うのもぎりぎり…という道も少なくありません。
運転に慣れていない人にとっては、最初は少し怖く感じるかもしれません。
一方で、移住してから増えた楽しみもあります。
移住前は、地元のお祭りに参加することはほとんどありませんでした。
でもこちらに来てからは、地域のお祭りや行事に触れる機会が増えました。
地域の文化や人とのつながりを感じられるのは、地方ならではの魅力だと感じています。
◎ 生活費は安くなるとは限らない
「田舎に行けば生活費が安くなる」と思われることもありますが、
実際は必ずしもそうとは限りません。
私たち夫婦の場合、移住前と比べて生活費はあまり変わらず、
どちらかというと少し増えたかもしれません。
たとえば家賃。
松山では5万円ほどでしたが、移住後は7万円ほどになりました。
また、車にかかる費用も増えました。
通勤や買い物など、日常生活で車を使う場面が多いため、ガソリン代や維持費がかかります。
さらに、こちらでは冬に備えてスタッドレスタイヤを用意する必要もあり、タイヤの購入費用もかかりました。
そして意外だったのが、人との付き合いにかかるお金。
農家の集まりや地域の飲み会など、
人とのつながりが生まれる分、交際費が増えることもあります。
◎ それでも、心が軽くなる瞬間がある
私自身、八幡浜市に移住してよかったと思っています。
移住前は、生活環境が合わなかったのか、月に1回は必ず体調を崩していました。
今振り返ると、知らないうちに心も体も疲れていたのかもしれません。
移住後の生活に慣れるまでは大変なこともありましたが、移住してからは、以前より穏やかな気持ちで生活できるようになりました。
移住したからといって、問題がゼロになるわけではありません。
でも、ふとしたとき――
・畑でもらった季節の野菜
・散歩中に見つけた野花
・地域の人との、たわいないおしゃべり
そんな何気ない出来事に、
「ここに来てよかったな」と思える瞬間があります。
この積み重ねが、少しずつ暮らしを支えてくれるのだと思います。
◎ 「どこに住むか」より「どう暮らしたいか」
移住して、そして相談を受け続けて感じるのは、
**大切なのは、場所よりも“暮らし方”**だということ。
自然が好き
子どもをのびのび育てたい
人とのつながりを大事にしたい
そんな「自分が大切にしたい価値観」があるからこそ、
地方での暮らしに納得感が生まれるのだと思います。
◎ 最後に:移住を迷っているあなたへ
移住者として、そして移住相談を受ける立場として感じるのは、
移住は、人生のすべてを劇的に変えてくれる魔法ではありません。
でも、
「自分はどんな暮らしがしたいのか?」
を見つめ直す、すごく大きなきっかけになります。
まずは、気になる地域に行ってみる。
移住した人の話を聞いてみる。
「住む」の前に、「知る」こと。
それが、後悔しない移住への第一歩だと思います。
あなたは、どんな暮らしを思い描いていますか?
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
このシリーズが、これから移住を考えている方にとって
少しでもヒントになればうれしいです。
❁八幡浜市地域おこし協力隊 移住支援員❁
2023年4月に着任。結婚を機に八幡浜に移住してきました。
人の温かさに触れながら、スローライフを送っています。
新鮮な魚とおいしいみかんが食べれる町。それが八幡浜。来て見て食べてみてください。
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ぜひご覧ください♪